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コラム
革バッグのひっかき傷、家で直せる?──自宅ケアで“味”に変える応急&本格リペア術

先に結論──浅いひっかき傷なら自宅で“目立たなく”できる。
本革の再生は
①傷の深さ見極め
②油分と色を同時に補う
③仕上げ保護膜で封じ込める、が成功の3ステップ
お気に入りの革鞄に爪やファスナーでガリッと入った細長い傷――瞬間的にショックで固まりますが、実は浅い表面スクラッチであれば、自宅にある道具+数百円の補修材でかなりのレベルまで修復可能です。ポイントは「削れた“革の繊維”を戻すことはできない」という現実を理解しつつ、オイルで柔軟性を戻し→顔料で色を補い→トップコートで閉じ込めるというプロと同じ理屈をミニマムな手順に落とし込むこと。これだけで光の乱反射が抑えられ、傷は肉眼ではほぼ分からない程度に馴染みます。
一方、革の断面が白く割れていたり、爪が引っかかるほど深い傷は“ホームケアでごまかす”域を超えるケースが多いので、早めに専門店へ相談を。深追いして失敗すると、かえって補修費がはね上がる可能性もあるからです。
一方、革の断面が白く割れていたり、爪が引っかかるほど深い傷は“ホームケアでごまかす”域を超えるケースが多いので、早めに専門店へ相談を。深追いして失敗すると、かえって補修費がはね上がる可能性もあるからです。
まず傷の“深さ”を見極める――決め手は「色」と「触感」
革のひっかき傷は大きく3段階。
(A)浅い表面スクラッチ、(B)銀面が剥がれ芯がうっすら見える中程度、(C)繊維層まで裂けている深傷です。スマホのライトを当て、色の変化と指先の引っかかりで判断しましょう。
- 色が少し白っぽいだけで指に引っかからない→A
- 削れ線が濃く、爪がカリッと止まる→B
- 下地の起毛層が見え、段差で繊維がめくれている→C
自宅修復対象はA〜B。Cはプロ依頼が無難です。“見極め”だけで半分勝負は決まります。
補修
ステップ1:オイルで柔軟性を戻し、色ムラを軽減
ひっかき傷直後は銀面(ツヤ層)が乾燥し、水分・油分が抜けて白く光ります。まずはレザーオイルを点置きし、繊維をふっくら戻す下ごしらえを行います。
- 1.柔らかい布に無色のレザーオイルを米粒大含ませる
- 2.傷の上に“点”で置き、10秒ほど馴染ませる
- 3.円を描くように薄〜く広げ、30分放置し浸透させる
油分が行き届くと色が深まり、浅いスクラッチならここでほぼ目立たなくなることも。色合わせが難しい人ほど、まずはオイル単体での仕上りを確認しましょう。
ステップ2:レザーカラークリームで色補正
オイル後も白浮きが残る場合は、顔料入りカラークリームで色を乗せて光の反射を均一化します。バッグの元色より半トーン暗い色味を選ぶと失敗しにくいです。
手順
- 1.綿棒の先にクリームを米粒大取り、傷線に沿って薄く塗布
- 2.30秒後、乾いた布を軽くポンポンと当て余分を吸う
- 3.ドライヤー冷風で1分固着→色付きが薄ければ2回目重ね塗り
綿棒+少量+重ね塗りで“段差レス”。塗りすぎは逆にムラになるので、薄く・複数回が鉄則です。
ステップ3:トップコートで光沢と耐久をプラス
色補正後はトップコート(ワックスor仕上げスプレー)で被膜を作り、色落ちと再傷を防ぎます。
手順
- 1.無色ワックスを薄く取って塗布→30秒乾燥
- 2.乾いた布で磨いてツヤ出し
- 3.必要なら撥水スプレーを20cm離して軽く噴霧
ワックスの摩擦熱で面が整い、傷の溝が光で飛ぶ“カモフラ効果”も。一晩置けばしっかり硬化し、手触りも滑らかになります。
やってはいけないNG補修例
自己流で悪化しがちな失敗を知り、同じ轍を踏まないようにしましょう。
ありがちNG
- ⚫︎アルコールシートでゴシゴシ→色落ち&乾燥
- ⚫︎マニキュア・油性ペンで塗る→光沢不自然&ベタつき
- ⚫︎ヘアドライヤー温風で急乾→銀面が縮みシワ残り
“急がば回れ”。革は“水と油と熱”に敏感と覚えておけば、大半の失敗は避けられます。
プロ修復が必要なケースと費用感
革の裂けや大面積の色剥げはプロのリカラー・パッチ処理が安心。
見極め基準
- ⚫︎傷幅が3mm以上&芯が見える
- ⚫︎バッグ角が擦り切れて繊維露出
- ⚫︎色差補正がA4サイズ以上
自己修復の限界を超えたら早めのプロ相談が結果的に安く済むことも。見積もりは無料の店が多いので写真送付で気軽に問い合わせを。
傷を作らないためのバッグ取扱い習慣
修復後は「傷をつけない持ち方」を心掛けるとより長持ち。
予防Tips
- 満員電車では金具や角を身体側に向け他の荷物と擦らない
- バッグ内に硬いガジェットを“裸”で入れない(ポーチ活用)
- デスクに置くときは下にクロスを敷き、摩擦傷を防止
小さな意識改革で傷は激減。大事なのは持つたびにバッグを“当たり前”に扱わないことです。
レザーウォッシュで表面&内装を清潔にキープ
最後に、補修した革バッグの日常メンテに便利なのが弱酸性泡クリーナー「レザーウォッシュ」です。
- 洗浄・保湿・除菌・消臭が1本で完了
- 表革の潤いを守りつつ内装にも使えるため、傷補修後の保護膜にも◎
- 泡を乗せてサッと拭くだけの時短ケア
傷がつきにくい“柔らかい革”を維持しつつ、バッグの内外を清潔に保てるので、今回の修復後のルーティンにぜひ取り入れてみてください。
まとめ
1.浅〜中傷は「オイル→色補正→トップコート」で自宅でも目立たなく
2.水・油・熱の過剰使用はNG、深傷はプロへ
3.傷を防ぐ取り扱い習慣とレザーウォッシュで日常メンテ
この3つを守れば、革バッグの引っかき傷も“歴戦の味”に変わり、長い相棒として活躍し続けてくれるはずです。