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コラム

革製品(バッグ)の正しい保管方法とは?

お気に入りの革製品を使わないとき、皆さんはどのように保管していますか?実は保管の仕方ひとつで、その革製品の寿命や見た目が大きく変わります。特に日本のように湿度が高い環境では、間違った保管によってカビが発生したり、革が型崩れしてしまうことも…。大切な革のバッグなどを長く愛用するためには、日頃のお手入れだけでなく、使わないときの保管にも気を配ることが必要です。たとえば湿気の多い場所に放置してカビが生えてしまうと、お気に入りのバッグでもお手入れが大変ですし、最悪の場合は使えなくなることもあります。逆に、正しい方法で保管しておけば、年月を経ても革の艶やかさを保てます。手間をかけて育てた革製品は、長い間あなたに寄り添い続けてくれるでしょう。

結論から言えば、革製品を長持ちさせるには湿度をコントロールし、保管場所の環境を整えることが何より重要です。革にとっての大敵は湿気であり、置く環境次第で革の状態は大きく変わります。そこで、本コラムでは革製品(特にバッグ)の正しい保管方法について、湿度管理と保管場所の選び方を中心に解説します。適切な湿度に保ち、通気性の良い場所で保管することで、カビの発生や革の劣化を防ぎ、美しい状態をキープできます。日頃からちょっとした工夫で、あなたの革製品をより長持ちさせましょう。


湿度管理で革をカビから守る


革は湿度に敏感な素材で、湿度が高すぎるとカビが発生しやすくなり、逆に乾燥しすぎるとひび割れの原因になります。一般的に革製品の保管に適した湿度は約40〜60%程度と言われています。これは人間が快適に感じる湿度とほぼ同じで、この範囲なら革も過度な湿気や乾燥から守られるためです。

日本の梅雨や夏場は室内でも湿度70%を超えることが珍しくありません。そのため、革製品を保管するときは湿度管理が欠かせません。まず、保管場所の湿度を把握するために湿度計を設置すると安心です。湿度が高い場合はエアコンの除湿機能を使ったり、クローゼット内に調湿剤(乾燥剤)を置くなどして湿気を下げましょう。ただし、乾燥剤は革に直接触れないように注意してください。ゼリー状の強力な除湿剤などは万が一液漏れすると革を傷める可能性があるため、使用しないほうが無難です。一方、冬場など湿度が極端に低い場合(40%以下)には、革が乾燥しすぎないよう加湿も検討しますが、加湿器の蒸気が直接革に当たらないよう距離を取りましょう。

保管中も革に適度な湿気と通気性を確保することが大切です。長期間しまいっぱなしにせず、ときどき風を通す工夫をしましょう。クローゼットにしまいっぱなしの場合は、月に一度は扉を開けて換気するのがおすすめです。晴れた乾燥した日に窓を開け、部屋ごと換気して湿度をリセットしてあげると安心です。空気の入れ替えによってカビの繁殖を予防できます。


革製品に適した保管場所とは


革のバッグや財布をしまうとき、保管場所の環境にも要注意です。基本は直射日光や高温になる場所は避け、かつ風通しの良い涼しい場所が理想となります。例えば、窓際や暖房器具の近く、湿気のこもりやすい浴室近くの収納棚などはNGです。日光や照明の光が長時間当たると、革が日焼けして変色したり劣化したりしてしまいます。

では、どこにしまうのが良いのでしょうか?おすすめは、普段使いのクローゼットや収納棚です。ただし、クローゼットは扉を閉めておくと空気がこもり湿気も溜まりやすいので、前述のように定期的な換気を心がけてください。また、収納スペースには少しゆとりを持たせ、革製品同士を詰め込みすぎないようにします。ぎゅうぎゅうに詰めると通気性が悪くなるだけでなく、お互いに擦れて傷む恐れもあります。理想は収納スペースの7〜8割程度のゆとりを保つことです。

革製品は呼吸する素材とも言われます。密閉された状態で長期間置かれると、革が息苦しくなってカビや嫌なニオイの原因になりかねません。紙箱やプラスチックケースに入れて保管する場合も、完全にフタをせず時々開けて空気を入れ替えるようにしましょう。特にビニール袋での保管は通気性が極めて低く、内部に湿気がこもってカビの温床になります。ビニール素材自体が革に触れると変質を招くこともあるため、避けてください。代わりに、購入時についてきた布製の保存袋(布袋)があれば活用しましょう。柔らかく通気性の良い不織布などの袋に入れておけば、ホコリ除けになりつつ革が呼吸できます。


革バッグを保管する際の手順と工夫


大切な革のバッグを長期間保管する前に、ひと手間かけてお手入れしておきましょう。保管前のお手入れと収納方法次第で、次に取り出したときの状態が大きく変わります。ここでは、革バッグをしまう際の具体的な手順をまとめます。日常的に使っているバッグでも、数日以上使わないときはこの手順を参考にケアしてあげてください。

1.革の汚れを落とす


保管前にまず、バッグの表面についたホコリや汚れをブラシや柔らかい布で優しく取り除きます。汚れが残ったままだと時間が経つうちにカビの原因になってしまうため、このひと手間が肝心です。革専用のブラシがあればベストですが、なければ柔らかい布でも構いません。しつこい汚れがある場合は、水で湿らせて固く絞った布で軽く拭き取ります。革がひどく濡れた場合は陰干しでしっかり乾かしてください。時間に余裕があるなら、革用の保湿クリームやオイルを薄く塗っておくと乾燥対策になります(つけすぎはカビの元なので注意)。

2.バッグに詰め物をして形を保つ


革バッグの中が空の状態だと、押されてヘコミができたり型崩れしやすくなります。そこで、中に柔らかい紙や布を丸めたものを詰めて、バッグの形をキープしましょう。不要になった布やタオル、新聞紙などが詰め物に役立ちます。新聞紙は湿気を吸い取ってくれる効果もあり、一石二鳥です。ただし、新聞紙のインクが革や内張りに移る可能性があるので心配な場合は、紙を薄い布でくるんでから入れると安心です。バッグ全体がパンパンに膨れるほど大量に詰める必要はありませんが、ふんわりと膨らむ程度に入れておくと型崩れ防止になります。

3.通気性の良い布袋に入れる


バッグ本体をホコリや光から守るため、保存用の布袋(不織布製の巾着袋など)に入れて保管します。購入時についてきた保存袋がある場合はそれを使いましょう。なければ、綿素材や不織布など通気性が良く、色移りしない袋を用意します。先ほど述べたようにビニール袋は厳禁です。布袋に入れることで外部のホコリ汚れを防ぎつつ、適度に空気が通ります。また、直接棚に置くより袋に入っているほうが、複数のバッグを並べた際にお互い擦れたりするのも防げます。

4.風通しの良い場所に縦置きで収納


最後に、準備したバッグをクローゼットや棚の中に立てた状態で置きます。平置き(寝かせる)より縦置きの方が、接地面が少なく、革への負担が軽減できます。可能であればバッグ同士の間隔も少し空け、空気が流れるようにすると理想的です。なお、革のハンドルやストラップ部分で吊り下げて保管するのは避けましょう。重みで持ち手が伸びたり、付け根部分に負担がかかってしまうためです。特に長期間使わないバッグほど、棚などに置いて保管するほうが安心です。

以上が基本的な保管の手順です。毎日使うお財布や仕事バッグなども、使わない日は中身を出して風通しの良い場所に置き、革を休ませてあげることが長持ちの秘訣です。長期間保管する特別なバッグだけでなく、日頃からこのような収納の習慣をつけておくと革製品全般にいい効果があります。


革バッグ以外の革製品の保管について


ここでは主にバッグの場合を想定して解説しましたが、革のジャケットや革靴など他の革製品にも基本の考え方は共通です。ジャケットなら通気性の良いカバーをかけてハンガーに吊るす、靴なら内部にシューキーパー(靴の形を保つための木型)を入れて保管する、といったように、それぞれ形に合わせた工夫をしましょう。いずれの場合も湿度と風通しに注意する点は同じです。


最後に:レザーウォッシュというお手入れ方法も


適切な保管を心がけていても、長い年月の中でどうしても汚れが溜まったりカビ臭が気になる場合もあるかもしれません。そんなときは、専門のクリーニングや「レザーウォッシュ」と呼ばれる革製品用の洗剤・丸洗いサービスを利用する方法もあります。革専用の洗浄液で丸洗いするこの方法なら、表面に付着したカビの胞子や長年の蓄積汚れもすっきり落とせる場合があります。ただし、自分で行うにはややハードルが高いため、大切なバッグの場合は革製品を扱い慣れたプロに相談するのがおすすめです。基本は日頃のお手入れと正しい保管でカビや汚れを防ぎ、こうした洗浄が不要な状態を保つのが理想ですね。

湿度の高い日本の環境でも、ちょっとした心配りと工夫で革製品を良い状態に保つことができます。革のバッグや小物を適切に保管し、大切に扱って、ぜひ長く愛用してくださいね。