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コラム
ファーのお手入れと革製品の水洗いを可能にするケア方法

ファー製品のお手入れは難しく、汚れたらクリーニングに出すしかない――そう思っていませんか?実はコツさえ掴めばファーのお手入れは意外と簡単で、自宅でも正しくケアして長く綺麗な状態を保つことができます。また、一般的に「革製品は水に弱い」とされ、水洗いはタブーと考えられてきましたが、近年ではその常識を覆すケア方法も登場しています。
本稿では、ファー(毛皮)製品のお手入れ方法と、革製品を水洗い可能にする画期的なケア方法について解説します。ファーや革を長持ちさせるポイントを押さえつつ、最後には水洗いを可能にした専用洗剤「レザーウォッシュ」シリーズもご紹介します。
ファー製品のお手入れは難しい?自宅でできるケア方法
ファー(毛皮)は繊細でデリケートな素材のため、お手入れが難しそうな印象があります。しかし適切な方法を知っていればファーのお手入れは決して難しくありません。むしろ日頃からケアを行うことで、汚れの蓄積や臭いを防ぎ、大切なファー製品を長持ちさせることができます。ここではファー製品の基本的なお手入れ方法と、自宅でできる簡易ケアを紹介します。
- 日常のお手入れ
- ファーは使うたびに軽くブラッシングして埃を落としましょう。毛並みに沿ってやさしくブラシをかけることで、ホコリやゴミの蓄積を防げます。また着用後すぐにクローゼットにしまわず、風通しの良い場所で陰干しして湿気や汗を飛ばすことも重要です。長期保管する際はハンガーに掛けて毛並みを潰さないようにし、通気性のある箱に入れて防虫剤を入れておくと安心です(※防虫剤は箱の上部に貼り付けると効果的です)。
- 水洗いする前の注意
- ファーを本格的に水洗いしたい場合は、まず製品に本革(レザー)部分が使われていないか確認してください。毛皮自体は洗えても、付属の革パーツが水に濡れると縮んだり傷んだりする恐れがあるためです。たとえば毛皮のコートの裏地や装飾に革が使われている場合、水洗いは避けたほうが無難です。革部分がないことを確認できたら、次の自宅洗いの手順に進みましょう。
自宅でできるファーの簡易洗浄方法
ファー製品は基本的に専門業者でのクリーニングが推奨されますが、軽い汚れであれば自宅で優しく手洗いすることもできます。汚れの大半は人の髪と同じように皮脂や整髪料、化粧品など油性のものなので、家庭用のシャンプーを代用する方法が知られています。以下は一般的なリアルファー(水洗い可能な毛皮)製品の洗浄手順です。
- 1.準備
- 洗面器などに約30°Cのぬるま湯を張ります。あらかじめブラッシングでホコリを落としておいたファーをその湯に浸し、全体をまんべんなく湿らせたら引き上げます。
- 2.洗剤(シャンプー)洗い
- 手のひらにシャンプーを1プッシュ取り、毛に揉み込むようになじませます。ファーを強く擦らないよう、優しく押し洗いするイメージで汚れを浮かせましょう。
- 3.すすぎ
- 洗面器の湯を替え、または流水でシャンプー成分が残らないよう丁寧にすすぎます。泡がなくなるまで何度か繰り返します。
- 4.コンディショナー仕上げ
- リンス剤(コンディショナー)を少量手に取り、全体の毛になじませます。これは髪にトリートメントするのと同様に、毛を柔らかく仕上げる効果があります(お好みで香り付きのリンスを使えば、柔軟剤代わりに匂い付けも可能です)。
- 5.再度すすぎ
- 洗面器に新しい水を張り、ファーを軽く泳がせるようにくぐらせてリンスを洗い流します。すすぎ残しがないよう注意します。
- 6.水切りと乾燥
- ファーを軽く持ち上げて水気を切ります。可能であれば洗濯機で10秒程度の短い脱水にかけると効果的です(※脱水しすぎると型崩れするため短時間でOK。脱水機がなければタオルで挟んで水気を吸い取る方法でも構いません)。その後、直射日光を避けて風通しの良い室内に吊るし、自然乾燥させます。ドライヤーを使う場合は冷風に留め、熱風は厳禁です。
- 7.仕上げのブラッシング
- 完全に乾いたら、毛並みを整えるためブラシで優しく梳かします。毛並みに沿ってブラッシングすると束だった毛がほぐれ、元のふわふわ感が蘇ります。
以上が自宅でできる簡易的なファー洗浄の手順です。
なお、軽い汚れや匂い程度であれば、必ずしも水洗いせずとも拭き取りケアで対処できます。例えば中性洗剤を薄めたぬるま湯に浸したタオルを固く絞り、ファー表面をやさしく拭き取ってから、洗剤成分の残留を防ぐため濡らして絞った別のタオルで再度拭く方法があります。
このように水を使わないケア方法であれば、革製品が部分的に使われたデリケートなファーアイテムでも応用可能です。ファーを日常的にお手入れしておくことで、クリーニングに頻繁に出す手間や費用を抑えられますし、大切な毛皮を快適な状態で長く使い続けることができるでしょう。
革製品が水に弱い理由
次に、革製品が「水洗いできない」と言われる理由を分かりやすく解説します。革(レザー)は動物の皮をなめして作られており、その皮革組織の大部分(約90〜95%)はタンパク質細胞で構成されています。具体的にはコラーゲンやケラチンといった繊維状のタンパク質です。水や熱によってタンパク質の構造は壊れやすく変性してしまう性質があるため、革を長時間水に浸すと繊維が膨らんでゆるみ、乾く過程で収縮して硬くゴワついてしまいます。つまり革が水に弱い第一の理由は、主成分であるタンパク質が水によって変質し、革の柔軟性が失われてしまうことにあります。
もう一つの理由は、革に含まれる油分(脂肪分)や保湿成分の流出です。革の繊維と繊維のすき間には、革をしなやかに保つための天然の油脂成分や水分を保持する成分(いわゆる細胞間脂質)が存在しています。しかし水で洗うとそれら大切な潤い成分まで汚れと一緒に溶け出して流れてしまい、革内部が乾燥してカサカサの状態になります。水洗い後に革表面が白っぽく粉を吹いたりヒビ割れが生じることがありますが、それは必要な油分が抜けてしまったサインです。
以上、「タンパク質の変性」と「油脂成分の流出」という二大要因が、革製品が水に弱い主な理由です。
革靴や革バッグに雨ジミができたり、水拭きした箇所だけ硬くなってしまったという経験はないでしょうか。それはまさに上記のメカニズムによるものです。従来、革が水に濡れてしまった場合はすぐに乾いた布で拭き取る・陰干しで乾燥させる程度の対処しかできず、「革は基本的に水洗いできないもの」と諦めるしかありませんでした。実際、普通の洗剤で革を洗うと汚れと一緒に革の成分まで溶け出し、硬化・収縮・色落ちといった致命的な劣化が起こってしまいます。革製品のお手入れといえばクリームやオイルを塗って艶を出す方法が一般的でしたが、これは言わば「汚れを落とさずに保湿クリームだけ塗ってごまかしている」ようなもの。革の内部に蓄積した汗汚れやカビなどはそのままでした。
革を水洗いできる画期的ケア「レザーウォッシュ」とは

革製品を自宅で丸洗いできたらどんなに清潔で快適か――そんな発想から生まれたのが、特許取得済みの弱酸性皮革用洗剤「レザーウォッシュ」です。
革が水に弱くなる原因(タンパク質と油脂の問題)を徹底的に研究した結果、ミズタニ社はそれらを同時に解決する独自処方の開発に成功しました。レザーウォッシュは洗浄と同時に革の栄養補給を行う世界初のオールインワン革用洗剤で、水洗いによる革ダメージを防ぎながら汚れを落とせるよう設計されています。
具体的には、水洗いで除去される革の油分や保湿成分を新たに補い、洗浄中にタンパク質が変性・破壊されるのを防ぐ成分が配合されています。そのため、汚れだけを落として革繊維自体は保護され、洗った後も革本来の柔軟さや風合いが損なわれません。
レザーウォッシュは、市販の革クリーナーやオイルとは一線を画す画期的なケア製品です。その特徴をまとめると次のようになります。
- ⚫︎弱酸性&天然成分配合
- レザーウォッシュは人の肌とほぼ同じpHである弱酸性で作られており、革にとっても優しい処方です。通常の洗剤(アルカリ性)は革には刺激が強いですが、弱酸性ならタンパク質を安定に保てます。また、天然由来の保湿・保革成分を配合しており、例えばラノリン(動物由来の油脂)など革に適した成分でできています。肌に触れても安全な成分で構成されているため、手洗い作業でも扱いやすく環境にも配慮されています。
- ⚫︎洗浄+保革のオールインワン
- 洗剤でありながら革のコンディショナーの役割も果たす点がレザーウォッシュ最大の特徴です。弱酸性に調整された洗浄液が水中で革に浸透し、汗・皮脂・カビなど水溶性の汚れをしっかり落とします。同時に、洗浄中に流出しがちな油分・潤い成分を新たに革に補給し、繊維のすき間まで栄養が行き渡るため、洗い上がりの革はしっとり柔らかです。洗いながら革本来の質感を蘇らせるので、洗浄後にクリームで保湿する手間も最小限で済みます。
- ⚫︎幅広い革素材に対応
- 一般的に水洗いが難しいとされる素材も洗える点も魅力です。スムースレザー(表革)はもちろん、スエード・ヌバックなどの起毛革やデリケートなラム革まで幅広く対応できます。さらに合成皮革(フェイクレザー)にも使用可能なので、革靴・バッグ・ジャケットから合皮のソファーやスニーカーまでこれ一本でケアできます。そして特筆すべきは毛皮(ファー)製品にも使えることです。他の革用クリーナーではファーの丸洗いはまず不可能ですが、レザーウォッシュは皮革と毛皮の両方に使えるよう開発されており、自宅でファーを洗える数少ない専用洗剤です。実際、水洗いとレザーウォッシュによる毛皮クリーニングで、毛皮コートの襟やマフラーについた皮脂汚れや匂いがすっきり落とせます。洗浄後は毛並みをブラッシングすることでふんわりとした風合いが戻り、新品のように清潔に仕上がります。
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