
Column
コラム
革製品の水洗いはNGなのか?最新技術で実現する革の丸洗い

革製品(財布・バッグ・ジャケットなど)は水に弱い——昔からそう言われてきました。実際、雨の日には革のバッグが濡れないように気を遣ったり、防水スプレーを吹き付けたりする人も多いでしょう。それほど「革に水は禁物」というイメージが浸透しています。
お気に入りの革のバッグにシミが付いても、「水で洗うのはNG(ダメ)」と聞くと、どう対処して良いか悩んでしまいますよね。しかし近年、この「革製品は水洗いしてはいけない」という常識が変わりつつあります。
実は革は人の肌ととても似ており、90%以上がタンパク質でできています。そのため、適切にケアすれば人の肌と同じように“洗う”ことも可能なのです。
本コラムでは、革の構造や水洗いがNGとされてきた理由、革を柔らかく保つ油分の役割、そしてそれらの課題を克服した最新技術「レザーウォッシュ」についてわかりやすく解説します。結論から言えば、革製品の水洗いは最新技術によって可能になりました。以下でその理由と仕組みを順番に見ていきましょう。
革の構造と水洗いで変質するメカニズム
革はもともと動物の皮膚から作られています。驚くかもしれませんが、革の成分の約90〜95%はコラーゲンやケラチンといったタンパク質で構成されています。タンパク質は熱や水分によって性質が変化しやすい繊細な素材です。
例えば卵の白身(タンパク質)は加熱すると固まって元に戻らないように、革に含まれるタンパク質も過度な水分や不適切な乾燥によって構造が壊れてしまうことがあります。水に濡れた革をそのまま乾かすと、内部のタンパク質の結びつきや配置が乱れ、乾燥時に革が硬く縮んでしまう原因になるのです。実際、大雨で濡れた革靴を乾かしたらカチカチに硬化してしまった…そんな経験のある方もいるかもしれません。これはちょうど、人の肌が極度に乾燥するとカサカサに硬くなってしまうのに似ています。革も同じように、過剰な水分はタンパク質の組織にダメージを与えてしまうのです。
革を柔らかく保つ「細胞間脂質」(油分・保湿成分)の役割
革がしっとり柔軟な質感を保つためには、内部の油分や保湿成分が欠かせません。革の繊維(タンパク質細胞)のすき間には、いわば潤滑油のような役割を果たす脂肪分や水分が存在しています。専門的にはこれらを「細胞間脂質」と呼び、革に適度な潤いと柔らかさを与えてくれる成分です。そのため、革用のオイルやクリームで定期的に保湿するお手入れが推奨されるほど、油分は革のコンディション維持に重要な役割を果たしています。言い換えれば、油分は革の“命”とも言えるでしょう。
ところが、水で革を洗ってしまうと、この大切な油分や保湿成分が流れ出て失われてしまう可能性があります。水だけでも長時間浸せば油分が抜けてしまいますし、まして通常の洗剤(多くはアルカリ性)は油汚れを落とす力が強いため、革内部の必要な潤いまで奪ってしまいます。その結果、洗った後の革は水分と油分を失ってゴワゴワに硬化し、ひび割れや変色の原因にもなります。長年使った革ベルトにヒビが入ってしまうのも、多くの場合、油分が抜けて革が脆くなったためです。人の肌でも、必要な皮脂を石鹸で落としすぎると突っ張ってカサカサになりますよね。それと同じで、革から油分が失われると柔軟性がなくなり、元のしなやかさが損なわれてしまうのです。
なぜ「革製品の水洗いはNG」と言われてきたのか
上述したように、革は水洗いするとタンパク質の構造が乱れて硬くなり、さらに内部の油分まで失われてしまいます。そのため長い間、「革製品を水で丸洗いするのはNG」とされてきました。実際、昔から革は基本的に洗濯せず、お手入れといえば乾拭きか表面にクリームを塗る程度が一般的でした。
革靴用のクリームやオイルで表面を磨いてツヤを出すケアをしている方も多いでしょう。しかし、それだけでは汚れ自体は落ちていません。汚れた革にクリームを塗るのは、ちょうど「顔を洗わずに保湿クリームを塗る」ようなものですし、水洗いせずにワックスだけかけるのは「車を洗わずにワックスを塗る」ようなものだという例えもあります。要するに、本来であれば革も洗浄して汚れを落とす必要があるのに、水洗いができないがために表面を誤魔化すケアしかできなかったのです。
では、水洗いできない革製品が汚れてしまった場合、人々はどのように対処してきたのでしょうか?主な方法を挙げてみます。
- <何もしない>
- 革が汚れたりカビが生えても、「革は洗えないから仕方ない」とそのまま使い続けるか、諦めて捨ててしまうケースもありました。お気に入りの革ジャンが汚れても手立てがないとなれば、我慢して使うしかない…という声もあったのです。
- <自己流で水洗いしてみる>
- 思い切って自宅で水洗いに挑戦する人もいました。汚れ自体は多少落ちるかもしれませんが、前述の通り洗った後の革はカチカチに硬くなり、色落ちや縮みも起きて、結局使えなくなってしまった例がほとんどです。普通の衣類用洗剤を使った場合はさらに状態が悪化し、革がボロボロになる危険もありました。
- <ドライクリーニングに出す>
- プロに任せようと、革専門のクリーニング店やドライクリーニングに出す方法もあります。ただし、料金が高額なうえに、水溶性の汚れ(汗ジミやカビなど)は落ちないことが多く、石油系の薬剤臭が革に残ってしまうケースもあります。また、ドライクリーニングでも革の油分は多少失われるため、戻ってきた革製品が以前より乾燥気味になることもありました。
このように、従来は革を丸洗いできないがために満足な汚れ落としができず、不便さや衛生面での不安を感じていた方も多かったのです。
汗をかいた革ジャンや、カビが生えてしまったバッグでも、本当は水でしっかり洗えたらどんなにスッキリするだろう…と感じたことがあるかもしれません。
しかし幸いなことに、近年この状況を変える革新的な技術が登場しました。
最新技術で革も洗える時代に:「レザーウォッシュ」の登場
革を水洗いすると固くなる原因について、専門家たちが原因を突き止め、長年の研究と試行錯誤を経て、ついにそれを克服する技術が開発されました。その結果生まれたのが、弱酸性の皮革専用洗剤「レザーウォッシュ」です。レザーウォッシュは、革の洗浄と革繊維の保護・栄養補給を同時に行う、画期的なオールインワンの革用クリーニング剤です。洗浄と栄養補給を同時に行う様子は、いわば革の“シャンプー&トリートメント”と言えるかもしれません。世界で初めて革を安全に丸洗いできるようにしたこの製品は、発売以来大きな注目を集めています。
現在では、洗いたい革製品に合わせてウェア(衣類)向けや靴・小物向けなど用途別の製品ラインナップも展開されています。
レザーウォッシュが革製品の水洗いを可能にしたポイントは大きく3つあります。
- 1.弱酸性の洗浄で汚れを落とす
- 人の肌と同じく、革の繊維にとっても弱酸性の環境は優しい状態です。レザーウォッシュは弱酸性に調整された洗剤で、水溶性の汚れ(汗や飲み物のシミ、カビなど)をしっかり落とします。水洗いによって繊維に染み付いたイヤなニオイまでスッキリ洗い流せます。中性〜弱酸性の洗浄液なので革への負担が少なく、まさに洗顔料で顔を洗うような感覚で革を洗浄できるのです。
- 2.革のタンパク質を保護する成分を配合
- 洗浄中に革の大切なタンパク質繊維が壊れないよう、レザーウォッシュには皮革組織を保護する特殊成分が含まれています。これによって、洗っている最中も革のコラーゲン繊維が変質・硬化しにくくなり、乾いた後も革本来の柔らかさが維持されます。縮みや型崩れを防ぎ、革製品の形状をしっかりキープできるのです。
- 3.失われがちな油分・潤いを補給する
- レザーウォッシュは洗浄と同時に、革に必要な栄養分を新たに補給します。具体的には、洗い流されてしまいがちな油脂成分や保湿成分を洗剤中に含ませてあり、洗う過程でそれらが革に浸透していきます。そのため、洗い上がりの革はパサパサにならず、しなやかで潤いのある状態に仕上がります。革特有の柔軟な質感や風合いが損なわれないどころか、むしろリフレッシュされるのです。
こうした独自の弱酸性洗浄技術と栄養補給の工夫により、レザーウォッシュは特許も取得しています。まさに革新的な(文字通り「革」の常識を変える)テクノロジーと言えるでしょう。
使い方もとても簡単です。洗い桶や洗濯機にぬるま湯を張り、所定量のレザーウォッシュを溶かして革製品を優しく押し洗いします。その後は陰干しで自然乾燥させれば完了です。特別な機械がなくても自宅で手軽に実践できます。
実際にレザーウォッシュの登場によって、「革は洗えないもの」という常識は大きく覆されつつあります。たとえば革ジャンや革バッグに染み付いた汗汚れ・カビ臭も、クリーニング店に出さず自宅の洗濯機で丸洗いしてスッキリ落とせる時代がやってきたのです。
おわりに
革製品の水洗いは従来ずっとNGとされ、多くの人が汚れを落とせずに困っていました。しかし、弱酸性で革に優しい洗剤と栄養補給技術の組み合わせによって、その常識が変わり始めています。
最新技術を取り入れた「レザーウォッシュ」を使えば、革ジャンや革バッグも怖がらずに丸洗いでき、清潔さと柔らかさを両立できるようになりました。
もう『革は洗えない』と嘆く必要はありません。大切な革製品を長く清潔に使い続けるために、この新しい革のお手入れ方法を取り入れてみてはいかがでしょうか。革も人の肌と同じように、正しく洗って保湿することで健やかな状態を保てますので、ぜひ最新のレザーウォッシュ技術で、お気に入りの革製品を安心してケアしてみてください。