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革ジャンはエマールで水洗いできる?――失敗しない丸洗い手順と専用レザーウォッシュ活用術

「エマールで革ジャンを洗う」という裏ワザは、ネット検索をかけると体験レポートが山ほど出てきます。「希釈して短時間で洗えば成功」「乾燥時にミンクオイルを塗れば大丈夫」といった声も確かにあり、実際に縮みや色落ちが最小限で済んだケースも報告されています。
しかし花王〈エマール〉の公式は、皮革を洗える素材と明記しておらず、衣類用中性洗剤メーカー各社もレザーの水洗いを推奨していません。つまり、うまくいった記事は「偶然ハードルをクリアした例外」であり、再現性は低いというのが冷静な見立てです。
それでも「汗・タバコ臭・カビを根本から落としたい」というニーズは強く、弱酸性で栄養補給まで同時に行えるレザーウォッシュのような専用洗剤が注目されています。
本稿では①エマール洗濯の原理と成功条件、②失敗リスクと公式見解、③王道の“丸洗いしない”ケア手順、④専用洗剤で“もっと簡単”に洗える理由――の4段構成で解説します。
なぜ「エマール洗い」が話題になるのか
家庭で洗えるおしゃれ着用洗剤の代表格〈エマール〉は中性で繊維に優しいとされ、ニットやシルクも洗える点が革ジャン愛好家に「いけるかも」と思わせます。さらにブログ記事では、30°C以下の水にごく薄く希釈し、洗濯ネットに入れて2〜3分揺らすだけで汚れと臭いが取れたという成功談がシェアされ、SNS等で拡散しています。実際にうまく洗濯できた事例も数多くあるようです。
成功のカギは“希釈率”と“乾燥ケア”
エマール洗いが比較的うまくいく条件は次の二つに集約されるようです。
洗剤濃度を通常の1/5以下に抑える
革繊維は水分を吸うと膨潤し、染料や鞣し剤が流出しやすくなります。界面活性剤が強すぎると油分が一気に溶け出し硬化が起こるため、薄めるほどリスクが下がるというわけです。
乾燥時に油分と形を戻す
すすぎ後はタオルで水分を吸い取り、陰干ししながらミンクオイルやレザークリームを数回に分けて塗布していく――これで失った油分を補給し、袖や裾を手で揉んで硬化を防ぎます。うまくいったブログの中には「乾燥に丸1日以上かけて揉みほぐした」と書いているものもあります。
それでも公式は「推奨しない」――三つの失敗リスク
花王公式サイトは〈エマールで洗える素材〉に皮革を明示していません。他メーカーも保証外であることを強調しています。実際の失敗例には、
縮み | 乾燥途中で革が元の寸法に戻らず、肩幅が2cm縮んだケース |
色落ち・銀浮き | 黒い顔料層がところどころグレー化した報告 |
ステッチ切れ | 濡れた状態で革が重くなり、吊り干しで糸が伸びた事例 |
定価10万円超のライダースでは、修復費用のほうが高くつくこともあります。
王道は“丸洗いしない”日常&月次ケア
日頃のケアは、もちろん丸洗いせずにブラッシング等を行うことが重要です。
毎回:ブラッシング+乾拭き
外出後に馬毛ブラシで埃を払い、ミクロファイバークロスで汗と皮脂を軽く伸ばす――30秒で済む習慣がカビ・臭いをほぼ防ぎます。
月1回:クリームで栄養補給
米粒3つ分のクリームを掌で温め、全体に薄くのばして乾拭き。艶と柔軟性がキープできます。
「もっと簡単」を叶えるレザーウォッシュという選択肢
日常ケアをしていても、長年積み重なった頑固な汚れや臭いを取りたい!というニーズは多いです。そこでレザーウォッシュという選択肢を提案します。これをエマールで成功させるには「極薄希釈」「オイル補給」と複数条件が必要なのに対し、レザーウォッシュは弱酸性で洗いながら油分と保湿成分を補給する“オールインワン”処方。
工程は3ステップ
- 1.30°Cのぬるま湯に規定量を溶かす
- 2.ネットに入れて30秒揺らす
- 3.タオル吸水→陰干しで完了
「洗う前より潤う」秘密
界面活性剤が汚れを浮かせる同時に、動物性精油が繊維の奥に、植物性精油が表面に定着し、乾燥時の突っ張りを抑えます。そのため、すすぎ1回・クリームなしでも“しっとり仕上げ”が実現。
まとめ:自己流or専用、選択のポイント
- エマールは開発元非推奨。成功例は希釈率・乾燥ケアを厳守した“上級者ワザ”。
- まずは丸洗いしない日常ケアが王道。
- 蓄積した汚れや臭いの除去――弱酸性・天然成分100%のレザーウォッシュなら、「洗剤の希釈・クリーム投入」などの難しい工程を省いて短時間で安全に洗える。
あなたのライフスタイルに合った方法で、革ジャンの一生を伸ばしてみてください。